商業簿記のみの3級に対し、日商簿記の2級検定では、出題科目に工業簿記が加わります。しかし、まだ簿記の勉強をしたことのない方ですと、「工業簿記はメーカーに特有の簿記」、対して「商業簿記はメーカー以外の大多数の企業で用いられる簿記」といったイメージしかお持ちでないのではないでしょうか?

それもあながち外れではありませんが、工業簿記の勉強を始める以上、内容をもう少し押さえておく必要があります。工業簿記は商業簿記と比べるとちょっと複雑なんです。
そして日商簿記の2級から始める方の場合、この工業簿記を独学で制覇できると思えるかどうかが、学習方法(通学・通信・独学)を決めるポイントになるでしょう。

ここでは商業簿記と工業簿記のちがいを端的に解説します。

■商業簿記
商業簿記は、「完成している商品を仕入れて販売する会社の財務状態を管理する」のに用いられます。家電量販店を例に見てみましょう。冷蔵庫や電子レンジほか無数の商材をそれぞれいくらの仕入れ値で仕入れるか。対して設定された販売価格はいくらか、月間の販売収支はどう推移したか。そこから人件費やテナント料など運営にかかった費用がいくらかかったかなど、経営に関わるすべての数字を財務諸表に記録するのが商業簿記です。このことは企業の規模にかかわらず、例えば商店街の電気屋さんでも同じ計算式を用います。

■工業簿記
一方、工業簿記は、完成された商品ではなく原材料から計算が始まります。製造業では、原材料などのコストを製造過程に投入し、それに労働力を加えて加工します。また加工の過程においては原価償却費、消耗品費などさまざまな用役も必要で、最終的に新たな価値ある製品が産み出されることになります。

この「価値が変わる過程」を、記録・計算・報告するのが工業簿記です。製品が完成した後の簿記の処理は、商業簿記となります。つまりメーカー企業では、工業簿記と商業簿記を併用することで運営されています。

日商簿記2級の初学者のつまづき所は、工業簿記の「価値の変換過程」を理解することに手間どることです。工場で働いたことがなくても、計算式に慣れてしまえばなんでもないことなのですが、慣れるまでが一苦労なのです。

これまでたびたび日商簿記2級は独学でも合格可能ですと述べてきました。しかしそれを鵜呑みにして独学を始める前に、何でもいいですから工業簿記のテキストを開いてみてください。その上で、どのような試験対策が有効か慎重に考えてみてください。